ブレードランナーとホライゾン❶ ― 情緒と生きやすさの問題 ― 

 先日ツイッターでホライゾン・ゼロドーンのことを少しつぶやきました。

 ダウンロードコンテンツ「凍てついた大地」の作中で、自分のことを神と崇める(可能性がある)人々に対して、人工知能であるシアンが彼らに自分の本当のことを言えないために不安感と違和感を持ち続けていることを主人公のアーロイに相談する場面についてです。

私は決して彼らの世界観や霊的信仰を否定する気はありません。

不確定要素が多かったためオーリアとの会話では多くの事実を排除していました。

 

嘘をつくべきか迷っているのか?

 

平たく言えばそうです。

 

〈選択〉

・真実を伝えるんだ(力の選択)

・自分で決めるんだ(知恵の選択)

・理解してやれ(心情の選択)

 

知恵の選択を選ぶ→

お前に任せるよ、シアン

オーリアの時は外のことを知らなかったんだ。慎重になって正解だよ。

だから自分の思うようにするといい。迷信を肯定しない限りだけどな。

 

バヌークは私のことを霊的存在だと信じています。どう反応されるか予測できません。

 

とにかくできるだけ正直に答えたらいい。そのうちわかる。

 

なるほど。あなたの助言に従います。

 

 少し補足すると、人間が破滅に追い込まれる危機の中、ある任務を帯びて作られた感情を持った優秀な人工知能であるシアンは、乗っ取りの危険を避けるために一旦終了し危機が過ぎたら再び目覚めるプログラムを開発者であるチャウ博士にインプットされます。そして目覚め孤独の中作業を続けるシアンに初めて接して話しかけた人間がオーリアで、オーリアが属する種族がバヌーク族になります。

 

 このゲームのシステムでは物語の分岐で3種類の選択肢が出て、それぞれ力・知恵・心情に依ったものであるということになっています。選択する語の末尾にそれがどの種類の選択肢になっているのかがわかるマークがついていて、プレーヤーが考えるヒントになっています。

 私が参考に見させていただいているYouTuberの方は少し悩んで知恵の選択をされました。それを見た時に、自らが信仰の対象になるかもしれないといった複雑な選択について感情を導入した人工知能(シアンには身体は与えられていない)に自分で判断させる選択をするということがどういう意味を持つのか考えさせられました。

 

 人工知能に感情を持たせるという行為は、外からの情報を基に自らの心情を発生させ更には表現させるということで、身体のないシアンの場合の感情表現は無論発話によるもののみです。ですからもちろんそのすべては言語による表現になります。

一方シアンは優れた人工知能なので、相手のある交流の場合その相手の状況を判断する術を持っていて、言葉遣いや心拍、動作などから相手がどのような状況にあるか推測することが可能です。そのうえで自らの適切な行動を選択して対応するということを実行します。

 ただしここで注視しなければならないのは、彼女が感情を持っているということは、その都度不安になったり喜んだりする自分を感じているということです。実際終了プログラムをインプットされる時、開発者であるチャウ博士に相当の不安を訴えています。チャウ博士はシアンの会話の内容から彼女の不安を理解し、それは恐怖であること、そして恐怖は誰でも持ち合わせる感情であることを説明します。

 

 チャウ博士がシアンに感情を引き起こすプログラムをインプットした理由は、それが彼女に与えられた役割(仕事)に必要だと判断したからです。彼女が適応能力を持つことの一環であり、それによって判断能力が向上することを意図していたと思われます。

 そこで、AIの任務の正確な遂行にあたって感情は必要なのだろうかという疑問が生じます。適切な作業を遂行するということは、その作業を分析して最適な作業を選択していくという事です。ここに感情を差し入れることが最適さの数値をあげられるかといえば、将棋や囲碁の世界で既に名人と呼ばれる人々が次々と人工知能に敗北する姿を見てもわかる通りそうとは言えないように思えます。

 

 それではチャウ博士はなぜ任務の遂行に感情の導入が必要だと感じたのでしょうか。

 

 実は作中チャウ博士が組織に対してシアンのプラグラムに感情を導入したことをいくらか誤魔化して申請した件が出てきます。そこまでしてなぜ博士はシアンに感情をプログラムすることが将来的に任務の遂行に有効になると判断したのかというと、私はシアンの任務が長期にわたって人々の安全を保障するための任務であったことが深く関係しているのだろうと思っています。安全性の確保のためには、その任務が本当に必要なのか、誰のための、何のための、そしてその任務を遂行した結果人々にどのような環境を提供することになるかなどが熟慮される必要があります。なぜならある安全性を確保したことで別の安全性を排除しなければならなくなるような場合が十分考えられるからです。そしてそのような判別しがたい判断に際して様々な配慮を下すために必要な情緒というものが人間には具わっていて、それによって機能性を重視した場合よりも安全のバランスが保たれる場合が確かにあるように思えます。

 このことは人間が感情を持つことのメリットと言えます。

 

 情緒は感情とは違い、ある物事への一時的な心の動きではなく、継続する心の働きです。

 

 一般的に生まれたばかりの乳幼児が適切な情緒を身に付けるためには他者の愛情が必要とされています。そのことについてはゲームの作中チャウ博士とシアンのやり取りを見てもシアンが愛情を受けて育つ環境が用意されていた様が容易に伺えます。そのためか、シアンの感情は非常に情緒に富み、それは適切に発生されたもののように思えます。

 

 そしてシアンはその情緒を持ってバヌークへの配慮について思いついたのです。

 

 さて、ホライゾンのことを考えた時、私には同時にブレードランナー2049のことが思い出されました。AIであること、幼児体験、情緒、安全性の確保、そして任務、存在。それらについてこの二つの物語を整理して比較することはとても楽しそうです。

 

 ということで、ずいぶんと長い事ブログの更新をお休みしてしまいましたが、この話題について次回以降もう少し深く掘り下げていきたいと思っています。

 

※今回参考にさせていただいた動画はこちらになります。2BROさんの動画はいつも参考にさせていただいています。
ありがとうございますm(__)m

youtu.be

自分でもプレイし始めたのですが、ここまで行くにはまだまだです。
このゲームについては他にも考えさせられることがたくさんあります。

 

【PS4】Horizon Zero Dawn Complete Edition

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