『フクロウの声が聞こえる』 いつかがいつか

 皆さんお待ちかねの小沢健二さんの今年二回目の曲のリリースがありましたね。『フクロウの声が聞こえる』自体は去年からコンサートなどで歌われていたらしいのですが、今回リリースされたものはSEKAI NO OWARIとのコラボでとても賑やかで力強い曲になっています。

 曲の聞きどころや楽しみ方などはもうYouTubeにご本人たちが披露なさっているので特に言えることもないのだけれど、何も持っていないはずの「子ども」だけが持っているエネルギーが大人の私たちにさえ見せる魔法のような力と、それにさらに媚薬のような力を与える夜の森のざわつきが、夢と現実の狭間のような空間に浮かび上がる世界を作り出すさまが、美しく元気に表現されていると思います。

 私にとってこのような体験ができる作品に出合ったのは初めてではなくてJane Yolenさんによる絵本『OWL MOON』(邦題『月夜のみみずく』)を読んだときに得た静かなイマジネーションから、静けさと神々の音と星の声を引いて、明るさと混沌と神々の声を足したような感じでした。

 神々の音とは静けさと同じようなのですが、分かりやすく言うと静かな夜に聞こえるしーんという音のことです。あのしーんの中に聞いている音が本当にあるんだよっていうのは以前何かのテレビの番組で見たことがあるのですが、頭の中では聞き覚えのないその音に人は勝手に恐怖や美しさを感じて戦慄するものですよね。今回の曲はそうではなくて、それは神々の声になってたくさんの囁きを耳元に放って、それを聞き分けてくらくらと酔っているような印象をうけました。同じ恐怖や美しさでもなんだか色付けされてカーニヴァルのようにやってくるようで、その大きさによってだいぶ印象が変わるものなのだなというのが私がこの曲に持った大きな感想になります。だからなんだか混沌として、でもずいぶんと感情は豊かに揺さぶられて、子どもって本当はこっちの方を聞いているのかもしれないとも思いました。ひょっとしたら時代が変えるものもあるのかもしれない。(小沢さんのテンションの問題なのかもしれないw)

 時代といえば、『フクロウの声が聞こえる』もそうなのですが、最近聞いた曲、LUCKY TAPESの『シェリー』だとかPerfumeの『If you wanna』だとかみんな〈いつか〉の音楽だと感じています。〈いつか○○できたら〉とか〈もし○○だったら〉。最近に限らず、希望を曲にするというのはよくあることだとは思います。しかし、勝手な思い込みかもしれませんが、それがなんだか最近は大きな願望みたいにどんどん膨れ上がって、なんだか破裂しそうな勢いで、うまく消化できていないように感じられて少し怖いです。

 「子どもにとっては子どもである今がすべてで、私や君にとっても今はとてもとても大切で、夢は今を生きるための糧にはなるのだけれど、今を生きる実感からはどんどんと遠のかせてしまうんだよ。」なぁんて声が聞こえたりするのです。

 いつかがいつか。それは私にとっての約束事で、儚いものではなくて、目の前にあるいつかをこのやろうと手を伸ばしてぶんどってやろうとするようなものなら、いつかもいいかと思ったりはします。

 

 

Owl Moon

Owl Moon

 

 

 

 お友達に感想をと言われたのでサクサクっと書いたものになります。今回のことで気になって前は図書館で借りて読んだ『OWL MOON』を取り寄せてみました。絵本は素敵ですよね。小沢健二さんの詩も素敵なので対比したりできたらおもしろいかなと思っています。

 

 北畠八穂さんの続きはもう少々お持ちください(m(__)m)