『静寂 ―ある殺人者の記録』感想文 死と円環する生について 【ネタバレ注意】

【はじめに】 今回のブログ記事は、トーマス・ラープ著/酒寄進一訳『静寂 ―ある殺人者の記録』の読者モニターとしてゲラを読ませて頂き、東京創元社様に提出した原稿を一部変更したものを掲載させていただきます。 多大なネタバレ要素を含みますので、これ…

番外編 エンデ『AだからBという関係性を超えて』ブログの向こう側 ―いぶりぃさんに質問!―(3)

いつもブログを見に来ていただいてありがとうございます。 前々回の続きを掲載させていただきます。 いぶりぃさん④ お返事ありがとうございます。 バスチアンが読んでいる『はてしない物語』のファンタージエンが虚無に飲まれたとしても、ファンタージエンが…

ミュシャ展【6月5日まで】閉設の前に

《スラブ叙事詩》のプロジェクトが―非常に実り豊かで、多くの点で驚くべきものであったとしてもー当時、(選択的ではあったが)国際的な情報に通じていたチェコの芸術界にさほど大きな熱狂をもたらさなかったのは意外なことではない。ムハが雄偉を誇った時代…

番外編 エンデ『AだからBという関係性を超えて』ブログの向こう側 ―いぶりぃさんに質問!―(2)

前回の続きになります。 Ponkichi②続き さて、いぶさんのご指摘のあったアトレーユが命の水を飲むことで愛を知ったことについてですが、アトレーユとフッフールは眠っている間に泉に連れて来られた。冒険を続けてもバスチアンがファンタージエンに来ないかも…

番外編 エンデ『AだからBという関係性を超えて』ブログの向こう側 ―いぶりぃさんに質問!―(1)

先日アップさせていただきましたエンデの著作を通じてエンデを知ろうとする試みですが、ブログにも書かせていただいた通り、元はいぶりぃさん(@iwri)の読書会でのお話からヒントを得、その後もいぶりぃさんにお話を伺ったり質問させて頂いたりして文章を書…

AだからBという関係性を超えて ―エンデの愛について―

「遠い、遠い昔のこと、」と花咲くおばさまははなしはじめた。「わたしたちの国の女王幼ごころの君は、重いご病気で、もう死にかけていらっしゃいました。女王さまには新しいお名前が必要で、それをさしあげることができるのは人間世界のものだけだったのに…

『翻訳と日本の近代』 未来の思考の足掛かりとして

前の記事の最後に丸山眞男・加藤周一著『翻訳と日本の近代』を足掛かりに翻訳について書いていきますと書いたのはいいものの、この本は実は非常に考えさせる箇所が多くて、どこを引用したらよいかもテーマによってだいぶ変わってきてしまうように思えるので…

アーレント『人間の条件』と『活動的生』について

Das Wort „öffentlich“ bezeichnet zwei eng miteinander verbundene, aber doch keineswegs identische Phänomene: Es bedeutet erstens, daß alles, was vor der Allgemeinheit erscheint, für jedermann sichtbar und hörbar ist, wodurch ihm die größtm…

「彼らが本気で編むときは、」感想文 ― トランスジェンダーと母性 ―

「追い出して」と、サラはアブラハムに近づきながら声をはりあげた、「あの奴隷と子どもを追い出してください」 アブラハムは妻のほうをむいた。 彼女は夫の返事も待たず、しゃべりつづけながらやってきた。「あのエジプト人の荒々しいけもののような子が、…

『騎士団長殺し』の考察 ― 二重思考と二重メタファーについての考察 追加 ―

人生は意図せずに始められてしまった実験旅行である。 フェルナンド・ペソア 『断章』107 二重思考と二重メタファーについて、先の文章では少し誤魔化していた部分があるので、ここで追加させていただきます。それは、二重メタファーは自身の中にあるもので…

『騎士団長殺し』の考察 ― 3. 二重メタファーと本当の悪である男のこと ―

詩人はふりをするものだ そのふりは完璧すぎて ほんとうに感じている 苦痛のふりまでしてしまう フェルナンド・ペソア 『断章』 1 二重メタファーについて …心 が〈 二重 思考〉 の 迷宮 へと さまよい こん で いく。 知っ て い て、 かつ 知ら ない で い…

内省するサイコパスと夢の儚さについて

霜草蒼蒼蟲切切 村南村北行人絶 独出門前望野田 月明蕎麦花如雪 村夜 白居易 サイコパスと内省するサイコパス 自分はサイコパスという人の話を今日は二度聞きました。 私はふーんと考えながら、サイコパスには夢があるんだなぁと思っていました。 国会はまさ…

『騎士団長殺し』の考察 ― 2.メタファーについて(2)芸術と存在 ―

いまの私は、まちがった私で、なるべき私にならなかったのだ。 まとった衣装がまちがっていたのだ。 別人とまちがわれたのに、否定しなかったので、自分を見失ったのだ。 後になって仮面をはずそうとしたが、そのときにはもう顔にはりついていた。 フェルナ…

『騎士団長殺し』の考察 ― 2.メタファーについて(1)『ねじまき鳥クロニクル』との比較―

人為的なもの、それは自然なものに近づくための道である。 フェルナンド・ペソア 『断章』16 村上春樹と暗くて深い穴について 村上春樹の本が好きなひとにとって『ねじまき鳥クロニクル』はおそらく特別な一冊になっていることと思います。私も、彼の本は勧…

『騎士団長殺し』の考察 ― 1.イデアについて ―

イデアとは何だったのか 『騎士団長殺し』の一番難解なところは、騎士団長であるところのイデアとはいったい何者なのかということに尽きると私は思っています。「私は(私の)イデアだ」というときのイデアだったとしたら、「私は私たらしめるもの自身だ」と…

小沢健二の新曲と新聞広告の幸福感について

小沢健二世代 小沢健二といえば、私の世代の人たちは大好きで、東大でバブリーで、ポップで、この上なく愛し愛された人というイメージで、時代の移り変わりにうんざりして、作詞もしなくなって、そうして日本を飛び出してしまったという感覚だったが、このた…

恋愛と結婚の愛について   ― リルケと「君の名は。」と「逃げ恋」と ―

あれは私の窓。私は今ちょうど うっとりと目がさめたところだ。 なんだか漂っているみたいだった。 どこまでがこのわたしの生身で、 どこからが夜なのだろう。 まわりのものはまだみんな 私自身みたいな気がする。 水晶の奥深くのように透明で、 ほの暗く、…

心はどこへいくのか

このところ何だか心に穴が開いてしまっているようだなぁと感じることがあります。感情がすぅーっとそこから漏れだして、自分の中に残るはずだった何かが遠くへ流れ出てしまっているような、そんな感じです。 ここにあるたくさんのものに囲まれて生活する私は…

「秋の底が抜ける」ことについて ―私と物質と二種類の想像力―

1 大森荘蔵の自然感 先日ツイッターで、今年は秋の話題をあまり聞かないという話をしたら、satoruさんがお知り合いの僧侶のかたが「秋の底が抜け始めましたなぁ」とお話しされていたという話題を教えてくださって、それはどういうことなのか考えたら、わりと…

ネモフィラを見に行く

ひたち海浜公園にネモフィラを見に行ってきました。 そしたら、チューリップが満開でした。 朝いちだったので人がいない間にと思ったら 素敵なおばあさまがよい佇まいで立っておられて こういう写真がもっときちんと撮れたらと思いました 不思議なぶつぶつが…

桜・菜の花・トロッコ列車

とうとう桜も見納めかという頃 菜の花も私の眼の下くらいまで成長していました ちょっとびっくり カメラマンがわんさか押し寄せる中 トロッコ列車の登場です 今度はゆっくりトロッコ列車に乗るのもいいなぁと思いました

墨東紀行 夜桜編

いつの世も、美しいものは恋人たちの夢の中に存在します 私と同じにのぞき見の人も 夜船のにぎやかさが、かえって桜の妖艶さを増すような 川面に映る明かりさえ、春には違って見えるものです すっかり舗装された桜の並木道は 古いものの時間と新しいものの時…

精霊の守り人の神話考3

1 人は救われることができるのか 今回ブログのアップが遅くなったのは、久しぶりに本格的に体調を崩したせいでもあるのですが、それよりなにより、ドラマの悪口はやめたかったのに、絶対に嫌だという場面にぶち当たってしまったからです。 私にとって、「精…

今年の桜はよい桜~♬

3月30日に桜を撮りに横浜に行ってきました。 お天気予報は晴天だったのにまたまた曇り。写真を真剣に撮るようになったら、曇り=明るい(明るすぎる!)っていう考え方に変わってしまいました。 関帝廟の狛犬さんはとってもユニーク まだ2,3分咲きだったのに…

精霊の守り人の神話考 2

1 3種類の人々 「お前の王や神はもうどこにもいない。王や神だというものを信ずるな。」 カンバルを出て新ヨゴ国に入るときに、ジグロはバルサにこう言い聞かせます。それはジグロにとっても同じこと。二人は神を捨てて自分たちだけの力で生き抜く覚悟で新…

写真についてくる物語たち

写真を撮るときはついいろいろなところに入り込んで怪しいものを探してしまうんですが 街灯の裏手に見つからないように張ってあるシールがめっちゃかっこよくて しかも、赤いインクの、指紋かな?付いちゃってるのはなんでだろう それにしても、この字体、ぎ…

精霊の守り人の神話考1

1 複数のコードの存在と読み取り可能な領域について 先日鳴り物入りで一回目の放送が始まったばかりのNHKのドラマ「精霊の守り人」ですが、原作に忠実というよりは、原作によって読み取れるものを、より現代日本という国で翻訳し直したような脚本になってい…

下町今昔梅事情

向島百花園の梅は五分咲き (2016年2月16日現在) ここいらではどこからでも スカイツリーが顔を出します 東京の下町、私が育った辺りは、家と家の隙間がないほどびっしりと民家が立ち並び お宅に梅の木があるよなんて家は少なかったように思います。 それは…

「バカにつける薬はない」という話

うおー、ひっさしぶりの暇人だ なででくり、なでてくりな、なんだ 暇人は俺のものだぞ 近づくな 近づくとこの猫手パンチが火を噴くぞ (散歩中間違って入ってしまったお墓にて ぬこ) ※脱出までに20分かかりました ここのところ、不倫疑惑とか浮気発覚とか、…

オタク試考

きょうもいちにち たのしかった・・・・あずまきよひこ『よつばと!』13巻末尾 オタクの定義というのはかなり難しいと私は思っているのですが、今やマクドナルドと同じ「世界の言葉」になってしまっているがゆえに、世界中の人々が何らかの形で知り、各々の…

物質のすべては光

純粋数学には美しいアイデアがぎっしり詰まっている。 物理学のとっておきの音楽は、美しいアイデアと現実(リアリティー)のあわいに、いとも調和した響きで流れている。 そろそろ少し現実(リアリティー)について論ずべきころあいだ。 フランク・ウィルチ…

無口な神と雄弁な神  「人類学=物語的 想像力の ‟不自由な” 跳躍」感想

「忘れるなよ。たとえ、この世の外側は全き玉だとしても、我々が生きている内側には混沌があるのだ、ということを。その混沌の野をひとつひとつ掘り返して見て、考えて、はじめて、新たな一歩を踏み出せるのだ。 司祭医は人が病で死ぬことを、はなからあきら…

恋愛を語るあれこれ

そうだ。わたしたちがまた会ったとしても、同じことだろう。会わなかったとしたって。使いものにならない、身のほどをわきまえた愛(本物じゃないと言う人もいるだろう、くびり殺されたり、悪い冗談になってしまったり、哀れにも摩滅してしまう危険を、決し…

実験1 (2)

論理哲学論考 (岩波文庫)作者: ウィトゲンシュタイン,野矢茂樹出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2003/08/20メディア: 文庫購入: 29人 クリック: 278回この商品を含むブログ (201件) を見る 5・11 いくつかの命題に共通な真理根拠のすべてが、ある一つの命題…

実験1 (1)

台湾、烏来(ウーライ)は昔首狩り族の原住民が住んでいた地域ですが、今は台北近郊の温泉地として有名で、台北市内から電車とタクシーで1時間以内で着く割には結構な山奥でした。 わざわざブログに写真を張ったのは、まるで正三角形のような山が面白くて、…

自家中毒と甘い飴    ― 星野源考 ―

夜の歩み リルケ 比較できるものは何もなく!それ自身で完全でないものがあろうか、 また、口に出して言えるものがあるだろうか。 われわれは何物の名も呼ばず、ただ耐えになうことができるだけだ。 そしてここかしこで、ひとつの光輝、ひとつの視線が われ…

ちょっとだけ怖い話

この前の明け方、足の指を触られている感じがして目が覚めました。 誰も足の指なんか触る人なんかいないし、しかも遠慮がちにそっと触っている感じ。それも目が覚めるとすぐになくなっていました。 沖縄には幽霊の話はすごくたくさんあります。近くの公園に…

エウレカセブンAOと今のゆくえ

エウレカセブンAOも少しずつ物語が進んでいっていろいろ感じてくるところも多くなってきました。 とにかく神話の世界からお話をぐっと現在に引き付けて、今の問題に食い込ませていったところに賛否両論出てくると思います。とりあえず、エウレカセブンでの…

『人間にとって科学とはなにか』

湯川秀樹と梅棹忠夫の1967年にされた対談をまとめたもので、もう一つのブログの方に上げるつもりで読んでいたのですが、対談って言うのはそこに重要事項が飛ばし飛ばし置いてあるもので、しかもそのひとつひとつを理解するためにまた読むべき本が増えて…

Perfume 3rd Tour 「JPN」に行ってきました!

昨日 Perfume 3rd Tour 「JPN」 に行ってまいりました! http://www.perfume-web.jp/cam/JPN/ 極寒のさいたまスーパーアリーナではありましたが、「スタジアムモード」なる最強座席数も満席。中の雰囲気は熱い熱い! 個人的にじんときたのは、MC2でのあーち…

きのう、怖かったこと

きのう、久しぶりに怖い目にあった。 地下鉄の改札で別れたので、ひとりきりで帰路についた。私の前にはひとりの少女が歩いていた。 紫色のロングコートにポニーテール。淡い紫のタイツにビーズの刺しゅう入りの黒いバレエシューズ。ずいぶんと大人っぽい恰…

男の子と女の子

私の職場には小さいお子さん連れの方も多いので、お子さんが飽きないようにおもちゃが置いてあります。5分以上かかりそうなお客様で、お子さんが3〜4歳の方の場合に、私はたいてい一つが7、8センチくらいの木でできた動物の形の色も付いた積み木をお勧…

ハクスリーと麻薬

ハクスリーは『すばらしい新世界』という有名な小説を書いた作家です。すばらしい新世界 (講談社文庫)作者: ハックスリー,Aldous Huxley,松村達雄出版社/メーカー: 講談社発売日: 1974/11/27メディア: ペーパーバック購入: 27人 クリック: 117回この商品を含…

大雨降りの午前中には

今日は朝からすごい雨で、家でできるだけ好きなことをしようと思ったんだけど、こういう日は掃除と洗濯したらだらだらテレビを見てしまったりします。 朝の連ドラの後、国際ニュースを見てからチャンネルを何気なく変えていたらジャニーズ・ジュニアの番組を…

aikoと椎名林檎のなかの女の子

aikoの新曲『ずっと』ずっと(通常盤)アーティスト: aiko 出版社/メーカー: ポニーキャニオン発売日: 2011/11/23メディア: CD クリック: 14回この商品を含むブログ (19件) を見ると 椎名林檎の新曲『カーネーション』カーネーションアーティスト: 椎名林檎出…

赤ちゃんと私

昨日仕事中9月に生まれたばかりの赤ちゃんを抱く機会がありました。そんなに小さな赤ちゃんを抱くのは本当に久しぶり。 赤ちゃんはすぐに私がお母さんじゃないことを見破って訝しい顔をしました。「ごめんね。ちょっとだけ代わったよ。」と言うと私の顔をじ…

アガンベンからの想像

アガンベンの『幼児期と歴史』がおもしろく、彼のそのほかの作品も読んでみました。幼児期と歴史―経験の破壊と歴史の起源作者: ジョルジョアガンベン,Giorgio Agamben,上村忠男出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/01/26メディア: 単行本購入: 4人 クリッ…

祝!初はてな

今日からはてなダイアリーのほうにも書き込みをしてみることにしました。こちらにはおもに読書日記的な記事を書きたいと思っています。 よろしくおねがいします。